2種(高校生)
「王者敗れる」。昨年の覇者青森山田高校、長崎総合科学大学附属高校に競り負ける。
2018年01月04日
スコア:青森山田高校 0-1 長崎総合科学大学附属高校
得点:前半25分 ⑩安藤瑞季
場所:フクダ電子アリーナ(千葉県)
王者敗れる。
青森山田高校の選手権連覇の行く手を阻んだのは、高校サッカー界屈指の名将、小嶺忠敏監督が率いる長崎総合科学大学附属高校。J1セレッソ大阪行きが内定している注目のストライカー、⑩安藤瑞季に先制点を許した青森山田。後半は転じて攻勢を確保し、次々とチャンスを作り出したが得点を奪うことができず、そのままタイムアップ。無念の3回戦敗退となった。
先制された前半は、一進一退の攻防が繰り広げられつつも、若干押され気味だった青森山田。長崎総科大のアグレッシブなプレスと前への推進力に手を焼き、一瞬の隙を突かれて⑩安藤に自陣を突破された。
青森山田を率いた黒田剛監督は、「失点をゼロにするという目的の中で、この試合は安藤を抑えなければいけませんでした。しかしその彼に前を向かせてしまったこと。ターンからのシュートはもちろんうまかったんですけれど、冷静に考えることができればなんでもない状況から得点を許してしましました」と悔しさをのぞかせた。
持ち味の長短を織り交ぜたパスワーク、前への意識、攻守の素早い切り替えをよく発揮し、素晴らしい攻撃の数々を見せたのは後半に入ってから。前半とは打って変わり、立て続けに長崎総科大のゴールへ迫った。
次代のエース候補である⑦檀崎竜孔のクロスから、⑯浦川流樺ゴールを目前に迫ったサイドからの攻撃。どんな状況でもボールを呼び込み、シュートを放ったストライカー⑪中村駿太の動き出し。交代するや否や、再三に渡ってチャンスを作り出した三國ケネディエブスの存在感。エースの背番号を託された⑩郷家友太の創造性。前がかりになるチームを後ろから支え、前半には得点を許した安藤を抑え込んだ守備陣の奮闘。
しかし、怒涛の勢いで放たれたシュートのどれもがあと一歩、精度を欠き、あるいはバーに嫌われ、ついにゴールの歓喜を呼び込むことができなかった。
黒田監督は試合全体を振り返り、「得点をとるチャンスが何回もあったにもかかわらず、入らなかった。決定力、最後の精度に関しては、昨年のチームと決定的に違う点なのかなと思います。後半に関しては自分たちのサッカーをしながらチャンスは作れましたが、運がなかったか、風が吹かなかったか。まあこれもサッカー。不確定要素のスポーツですから。これが選手権という大会なのかなと思います。1-0で負けるゲームはここまでそんなになくて、逆に競り勝ってきた方が多かったので、悔しいですね」と唇をかんだ。
1年間チームを引っ張り、この試合でも冷静な判断力と統率力を持って、最後尾からチームを鼓舞し続けた主将の④小山内慎一郎は、「決定機を何本も作っていましたが、得点がとれなかった。それがこの結果につながったと思います。そこは足りなかった点だと思います。情けなかったです。この試合、何もチームのためにできることがなかったキャプテンに、最後までついてきてくれたメンバーや部員、支えてくれた監督とコーチに感謝したいです。たくさんの人が支えてくれて、ここまでこれたので」と、眼に涙を浮かべながらも真摯に語ってくれた。
青森山田の戦いは終わった。少しの休止を経て、新しい日々が始まる。「今年とは違うチームになるとは思いますが、また一からやっていきます」と黒田監督。今しばらく雪の降りしきる青森で、来年雪辱を果たすため、北の雄は牙を研ぐ。
(文 本田悠喜)