大学サッカー通信
第3回 大学サッカー通信 ~原山海里(青森山田高校→東京学芸大学2年)~
2017年07月01日
取材:文 本田悠喜(スポーツライター)
第3回 原山海里(青森山田高校→東京学芸大学2年)
はらやま かいり
埼玉県出身。クマガヤSC(埼玉県)から青森山田高校サッカー部に入部。代名詞は「ロングスロー」。飛距離40メートルオーバーというこの特異な武器は、青森山田高校3年時の選手権でも大きな話題となった。
青森ゴールVol.32、35、38号にインタビュー掲載。
取材日「2017年5月28日(日)/JR東日本カップ2017 第91回関東大学サッカーリーグ2部 前期第7節 東京学芸大学 対 国士舘大学」
取材当日は、リーグ戦で上位グループに位置する国士舘大学との一戦だった。だが、この試合のメンバーリストに、原山海里の名前はない。理由を聞くと、「右足の第2第3第4中足骨の疲労骨折と、同じく右足の足底筋膜炎を起こしてしまって」ということだった。
「ゴールデンウィークの神奈川大学戦(5月3日)ぐらいから違和感があって、それが立正大学戦(5月14日)でピークになってしまいました。それで病院に行って、検査してもらって、怪我が発覚しました」というように、開幕から試合に出続けていた中で、知らない間に疲労がたまっていたのだろう。無念の離脱となった。
しかし「そこまで重度の怪我ではないので。もうリハビリで走ったりして。早ければ2週間後ぐらいから復帰できればいいかな。徐々に復帰していこうと考えています」と、その声は暗く沈んだものではなかった。
青森山田高校を卒業し、東京学芸大学に入学。1年時から試合に出場してきた昨年を振り返ってもらいつつ、大学サッカーに身を投じた原山海里の今を追った。
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取材当日は応援団の一員として声援を送っていた。
———1年生の時からスタメンに抜てきされ活躍していましたが、昨年はどういう1年になりましたか?
「高校の3年間を終えて、学芸大学に来て、高校サッカーとは全く違ったスピード感だったり、身体の強さだったり。そういう高校とはまた違うレベルで戦って、すごく刺激を受けた一年間だったかなと。新たな壁にぶつかることが多かった1年だった思います」
———その壁がありつつも試合に出続けられた要因は何でしょう。
「まあ去年はあまり結果に出なかったんですけれど、自分の1番の武器であるロングスローです。今年はもういくつか点に絡めました。そういう誰にもない武器があるのも大きいかなと思います」
———飛距離が伸びたと伺いました。
「そうですね。高校時代と比べてかなり飛距離は出るようになりました」
———ロングスローが大学サッカーでも通用するのが確認できたと。
「はい、そうですね」
———ではロングスロー以外に、ここを努力してきたという点はありますか?
「ウェイトトレーニングです。大学に入ってからフィジカル面で敵わないこともあったので。上半身をやったら下半身もやって。あとはステップワーク。やっぱり1対1の対応、個の部分で負けないようになりたいので、そこを重点的にやっていくようにしました」
———その成果は出ましたか?
「そうですね。今年からは徐々にフィジカルで負けないことが増えました。まあ抜かれることもあるんですが、昨年に比べると対応できているので、そういう面で実感していますね」
『学業とサッカー、永遠の課題について』
———それでは学業の方はどうでしょうか?
「国立大学という環境に来て、難しいこともあります。けれど勉強もやっておかないと、将来もし自分がサッカー選手になれなかった時、なれたとしても、そのあとのセカンドキャリアを考えると、やっぱり勉強もしておかないと、自分の道が広がっていかないと思うので。その面は友人にサポートをしてもらいながらでも、しっかりやっていこうと思っています」
———いま話にも出ましたが、卒業後の進路はどのようにイメージされていますか?
「自分の小さい頃からの夢がサッカー選手なので、大学を卒業してプロのチームに入るのがベストだと考えています」
———しかしいろんな誘惑もあるかと思います。
「そうですね(笑)まあ遊びすぎず、ハメを外しすぎず。サッカー選手になるという夢を叶えるために、やることはしっかりやって、遊ぶ時は遊ぶ。そういうオンとオフをはっきりするようにはしています」
『振り返る青森山田での日々』
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———そういう私生活の面でも、青森山田高校の3年間が生きているのではないでしょうか?
「そうですね。礼儀や人とのコミュニケーションをするときの態度、そういう人間性の部分は学ばせていただきました。そういうところは、大学に入ってからでも生かせているのかなと思います」
———もちろんサッカーの面でも?
「はい。黒田監督には、特に守備面について厳しく指導をしていただいたので。いまもコーチングの部分だったり、守備に関するところを特に大学でも生かせていると感じています」
『後輩たちに送る真摯なメッセージ』
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———青森山田高校といえば、昨年の活躍をどのように見ましたか?
「自分たちはプレミアイーストを2位で終わった分、優勝してくれたのはすごく嬉しかったです。彼らは年の近い後輩たちなので、すごく仲が良くて、思い入れも強いのでなおさらでしたね」
———現地へは行かれましたか?
「チャンピオンシップは部の予定と被ってしまって観に行けなかったんですが、選手権は全試合応援に行けました。試合を生で見て。高校サッカーはやはり注目されるので、楽しそうだなあって。すごく羨ましかったですね」
———嬉しくもあり、羨ましくもあり?
「そうですね、はい」
その後輩たちも、何人かが大学サッカーの世界に足を踏み入れましたね。先輩としてアドバイスはありますか?
「何のために大学というステージに進んだのかを考えて、そして行動するのか。それが大事だと思います」
———大学はすべて自分で決めなければいけません。
「そうですね。例えば食事もそうです。油物を取らないとか。そういう自分なりのルールを決めるというか。いま何をしなければいけないのか。何が夢の実現への道になるのかということを考えてほしいです」
———なるほど。では在校生へのアドバイスは?
「そうですね・・・。今の環境で通用していても、他で通用するのかというのはまた全然違ってくると思います。現状に満足するのではなく、どんどん上を目指してもらえたらと思いますね」