大学サッカー通信
第29回 大学サッカー通信 ~横濱菜奈(明成高校→八戸学院大学女子サッカー部4年)~
2019年10月21日
第29回 横濱 菜奈(明成高校→八戸学院大学女子サッカー部4年)
八戸学院大学女子サッカー部 4年 GK
横濱 菜奈取材日 2019年9月26日(木)
八戸学院大学美保野キャンパス人工芝グラウンド
よこはまなな
青森県三沢市出身。
小中学時代を八戸市のナカスポで過ごし、その後宮城県の明成高校へ。同校を卒業後、八戸学院大学に入学。同大女子サッカー部では1年生からGKとしてレギュラーで活躍。2016年、2018年、2019年の国体選抜メンバー。
卒業後は県内での就職が決まっている横濱菜奈。思い切りボールを蹴って、そして止められるのもあと数ヶ月。学生として、そしてサッカー選手として過ごす残り少ない時間を精一杯駆け抜けている横濱にこれまでのサッカー人生について聞いた―。高校を卒業してからの2年間と、これからについて語る―。
横濱がGKを始めたのは、小学5年生の時。チームの監督から声をかけられたのがきっかけだった。これだけならよくある話なのだが、横濱は「特にGKがやりたかったわけではなかったんですけど、もともとドッチボールが好きだったので」と快諾。意外な理由でGKを始め、以来ずっとこのポジョションでピッチに立ち続けている。
GKの魅力を横濱は、「やっぱりシュートを止めた時。あとは、これは多分GKだけにしか分からない感覚なんですけど、周りからは触れていないと思う時でも、GK自身は指先がかすかに触れてるってときがあるんです。そういう時に『みんな気づいてないだろうけどちゃんと触ってるぞ』っていう、ピッチにいる選手の中で自分にしか分からないあの感覚が好きですね(笑)」と話す。
そんな横濱は、小中学生時は八戸市のサッカーチーム「ナカスポ」でプレーし、高校入学を機に県外へ。宮城県の明成高校に入学する。故郷を飛び出したわけは、「青森県に比べると競争率が高い宮城県で挑戦してみたかったから」。当時は兄も宮城県の仙台大学に在学していたこともあり、明成高校への入学と共に親と宮城県に引っ越したという。
いざ青森県を出て宮城県にプレーの場を移した横濱。当時を振り返って、競争率の高さを肌で感じたと話してくれた。
「宮城は常盤木学園、聖和学園、仙台育英とレベルが高いチームが多いので、競争が激しかったです。青森はその点でまだまだなので、ライバル関係ができるような環境になると、もっと女子サッカーが盛んになるのかなと思います」
余談だが、青森ゴール編集部にはたびたび中高生から県外の女子サッカー事情に関して、「県外のレベルって青森と比べてどうなんでしょうか?」という便りが届く。そこで、県外を経験して青森に帰ってきた横濱に、何か後輩たちにアドバイスがあればと聞いてみた。
「上を目指したいのであれば、一回は県外で挑戦してみるのもいいと思います。東北だけでなく関東圏や関西圏にチャレンジする道もあると思います。県外で挑戦してチャンスを掴めなくても、その経験を生かすために青森県に帰ってくればいいですよね。私が大学を八戸学院にしたのは、明成高校にいた時に仙台大学とよく練習試合をして、かなり負け越していたからなんです。だから同じ大学生になった時に、仙台大学を倒したいという気持ちがあったんです。今悩んでいる人も多いと思いますが、機会があればどんどん挑戦してほしいなと思います」
そうして多くの経験を積み、青森に帰ってきた横濱。八戸学院大学では1年生からレギュラーとして活躍。
当初は先輩たちに遠慮してなかなか苦労したと言うが、逆にその先輩たちから「もっと喋っていいよ」と背中を押される形で復調。「GKなんて自信がなければやっていけないポジションなので」と試合中も積極的に声を出せるようになったのだとか。
以来、長期に渡って八戸学院のゴールマウスを守ってきた横濱はキャプテンにも選ばれた。チームを引っ張っていく立場に置かれることで、チームメイト、特に後輩たちについてはよく気にかけるようになったという。
「自分が説得力をもって方向性をちゃんと示せないと、みんな付いてこないから大変といえば大変です。特に後輩たちは勝ち気が強い子達で、だからこそ今後に可能性をすごく
感じるんです。だからその可能性をすべていい方向に発揮できるように頑張ってほしいです」
また、在学中の3回にわたって国体のメンバーに選出されている横濱(1、3、4年生時にそれぞれ選出)。内外から確かな評価を受けつつ、昨年には、八戸学院に入学した理由でもある仙台大学に勝利するという目標も叶えた。
「去年の東北女子リーグで仙台大学に勝ったんです。PK戦までいったんですけど、自分も止めて、あとは枠外に外してくれたりして勝てました。あの勝ちでPKに対する自信も持てたし、ずっと勝ちたかった相手に勝てたこともあって印象に残っています。今にも生きていますね、あの時の経験は」
また、今年で4年生になる横濱は、この4年間ずっと、チームとしても個人としても目標にしてきたインカレ(全日本大学女子サッカー選手権大会)での1勝を目指している。昨年は大阪の追手門学院大学に2ー3の敗戦。一昨年は北海道の札幌大学に1ー2で敗戦と、ここ数年は僅差の敗北で涙をのんできた。だからこそ 〟今年こそは〝 とチーム全体で意気込んでいる。
そして1つのビッグゲームとして皇后杯がある。昨年は常盤木学園に1ー10という衝撃の大敗を喫し、「正直去年はメンタルをズタボロにされました」と苦い顔で当時を振り返る。しかし当然リベンジを狙っているという。そのためにも、「どんなレベルの相手と当たっても自分たちのリズムを崩さないように戦えないといけません」と気を引き締める。
卒業後は県内での就職が決まっている横濱だが、仕事柄、土日が休みになるとは限らないとのことで、少なくとも入社して数年はサッカーから離れなければならないという。思い切りボールを蹴って、そして止められるのもあと数ヶ月。横濱は今日も学生として、そしてサッカー選手として過ごす残り少ない時間を精一杯駆け抜けている。