大学サッカー通信
第33回 大学サッカー通信 ~嵯峨理久(青森山田高校→仙台大学3年)~
2019年12月12日
第33回 嵯峨 理久(青森山田高校→仙台大学3年)
仙台大学 3年 MF
嵯峨 理久取材日 2019年11月2日(土)
第44回東北地区大学サッカーリーグ 1部 第12節
八戸学院大学 vs 仙台大学
八戸学院大学美保野キャンパス人工芝グラウンド
さが りく
青森県おいらせ町出身
小学生時代はヴァンラーレ八戸FC U-12に所属。中学の時はウインズFC U-15に所属し、U-15日本代表候補合宿メンバーにも選出される。その後、青森山田高校に進学すると2年時にはトップチームの試合に出場し、レギュラーを掴む。3年時には高円宮杯U-18サッカーリーグ2016チャンピオンシップ、第95回全国高校サッカー選手権大会を制覇し、高校年代2冠を達成。仙台大学に進学すると、1年時からレギュラーを掴み、3年生となる今季はキャプテンを任されている。
2016年の年末から2017年の初頭にかけて行われた第95回全国高校サッカー選手権大会。同大会で初めて優勝を果たした青森山田高校の面々の雄姿は、青森県民をはじめ、全国のサッカーファンを唸らせたことだろう。
高円宮杯U-18プレミアリーグEASTを先頭で駆け抜け、チャンピオンシップも勝ち取ったこの年の青森山田は、U-18年代の2冠という偉業を達成している。その後、チームの中心選手だった髙橋壱晟(現モンテディオ山形)と廣末陸(現レノファ山口)がプロへ挑み、あるいは大学サッカーに戦う舞台を移した。 あの栄冠から3年。仙台大学の3年生になった嵯峨理久は、サッカー部のキャプテンとしてチームを引っ張る立場にいる。
「青森山田にいた時は全然そんな、キャプテンをやるというキャラクターではなくて。だから当時のチームメイトにも、そうでない友達にも、キャプテンになったという話をするたびに『大丈夫か?』と突っ込まれます(笑)」
青森山田にいた時の嵯峨にキャプテンというイメージはなかった。チームのいじられ役というのが衆目の一致するところで、嵯峨自身もそのキャラクターに徹していたように思う。
しかし彼は変わった。仙台大学という環境がそうさせた面もあれば、本来的な彼の素質という側面もあるだろう。3年生にしてキャプテンを務めることにプレッシャーはあっただろうが、「4年生の先輩たちも僕の立場が大変だと汲み取ってくれて、いつもサポートしてもらっています」と話すように、支えられつつキャプテンとしてチームを牽引しているようだ。
そんな嵯峨に話を聞いたのは、仙台大学が所属する東北大学サッカーリーグ1部の2019年度最終戦を終えたばかりの時。大学生になり心身ともに充実しているという嵯峨に、大学サッカーの魅力と来年迎える大学サッカーラストイヤーへの意気込みについて聞いた。
八戸学院大学とのリーグ最終戦を1得点2アシストの大活躍で終えた嵯峨。優勝をすでに決めていた段階で挑んだ試合についてまずは振り返ってもらったのだが、自身の活躍の話はそこそこに、12月に行われるインカレ(全日本大学サッカー選手権大会)に向けての課題について話し始めた。
「勝利に貢献できたのは良かったですが、まだまだ足りない部分があります。そこは改善していきたいです。チームとして、立ち上がりは悪くなかったんですけど、序盤に失点してしまいました。そこから少しバタつくのがいつものパターンですが、今回はみんな落ち着いていて、いつものサッカーをすることができました。セットプレーから点を決めてチーム的には乗れたのかなと(嵯峨のアシスト)。ただ9年間無敗で優勝を続けてきたので、その記録を今年達成できなかったのは先輩方に申し訳ないです。負けた試合もリーグ優勝とインカレ出場が決まった直後だったので、気の緩みがあって。これを繰り返さないように、インカレに向けて、気を引き締めてトレーニングに臨みたいと思います」
キャプテンらしい言動に頼もしさを感じつつ、次は嵯峨自身が感じる大学サッカーの魅力について聞いてみる。すると返ってきた答えは、ピッチの周辺にある事柄から学んだという意外なものだった。
「大学サッカーは選手自身が主体になります。指導者はもちろんサポートしてくれるんですが、色んな意味でこちらの自主性を促してもらえるというか。練習も運営も僕たち大学生が参加する幅が広いので、今後サッカーを続けていく上で、プレー以外の面を学べたのは良かったと思っています。試合をサポートしてくれている人がたくさんいると気づいたこともそうです。そうした人たちがいてこそ、僕たちはサッカーができているんだということを改めて実感しました」
高校と違って自由の度合いが上がる大学という環境は、良くも悪くも個人の自主性が試される場になる。サッカー以外に魅力を感じることももちろん自由で、実際に仙台大学にいる200人ほどのメンバーと様々な話をするのが楽しいと嵯峨は言う。
青森山田時代にはプロという選択肢を持ったメンバーに囲まれていたが、そうした多様性に溢れた環境にいることで、「サッカー以外のことも考えながら成長できている」と嵯峨。高校時代とはまた違ったメンタルでサッカーに打ち込むことができているのだとか。
また天皇杯の存在も大きいという。カテゴリーを超えて日本一のサッカーチームを決める伝統のトーナメント戦の天皇杯。公式戦という舞台で強者に挑むことができる環境に刺激を受けているとのことだった。
そうして、高校時代と変わらずボールを追いかけてきた嵯峨だが、来年はついに大学サッカーもラストイヤーとなる。最後に、これからの展望についても聞いた。
「早いですよね(笑)。まだ最終学年になる実感は沸かないんですが、今年のインカレも含めて、今後も良い成績を残して、そしてプロの舞台に行きたいです。そのためにも大学で活躍するべき飛躍の年にしなければいけないと思っています。プロへの内定を決めて、これまでお世話になった色んな人、指導者や家族に恩返ししたいです。本当に、色んな人に感謝の気持ちを伝えられる、そういう年にできたらと思います」