大学サッカー通信
第39回 大学サッカー通信 ~住永 翔(青森山田高校→明治大学4年)~
2020年07月09日
第39回 住永 翔(青森山田高校→明治大学4年)
すみなが かける
北海道出身。コンサドーレ札幌U-15から青森山田高校に進学。2年時からレギュラーを掴み、3年時にはキャプテンを務めた。高円宮杯U-18サッカーリーグ2016チャンピオンシップで優勝。この年の高校選手権でも優勝し、高校年代2冠を達成。同大会の優秀選手に輝いた。
取材・写真・文:安藤 隆人
取材日:2020年7月5日(日)
関東大学サッカーリーグ1部 開幕戦 明治大学 vs 駒澤大学
@流通経済大学龍ケ崎フィールド
掲載号VOL.38、39、40、41、43、44
2016年度の選手権で2分50秒の選手宣誓をして話題を呼び、青森山田高史上初の高円宮杯プレミアリーグ優勝、選手権優勝の2冠を達成した代のキャプテン・住永翔。大学サッカー界の名門である明治大に進学し、早くも4年目。最高学年を迎えていた。
鳴り物入りで明治大に入学するも、選手層の厚さの前に苦しんだ。特に昨年は9人(安部柊斗、中村帆高・共にFC東京、森下龍矢・サガン鳥栖、瀬古樹・横浜FC、加藤大智・愛媛FC、小野寺健也・モンテディオ山形、佐藤亮・ギラヴァンツ北九州、川上優樹・ザスパクサツ群馬、中村健人・鹿児島ユナイテッドFC)ものJリーガーが誕生し、関東大学リーグ、総理大臣杯、インカレと3冠を果たした最強世代とあって、彼の出番は多く訪れなかった。リーグ戦スタメンは4試合。ベンチ外の試合もあった。
「明治大は物凄く層が厚くて、サッカーのエリートの集まりで、それぞれストロングポイントを持っている選手が多い。一緒にトレーニングしているだけでもサッカーが楽しかったし、そこに関しては明治大に来て間違いではなかったと思う一方で、自分のストロングポイントを考え直した。基礎技術は負けていないし、ボールに絡んで味方の特徴を引き出すパスを出すことが武器というのは再認識できました。ただ、守備の部分は足りていなかった。明治大は球際、1対1のデュエルにこだわっているチームなので、監督の信頼をそこで掴みきれなかったので、磨いていくことを意識しました」。
そして今年、住永は「プロになるために勝負の年」と、自らの将来をかけて大学生活最後のシーズンを迎えたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、思い描いていたものとは違う展開になっていった。練習が中断し、リーグ戦の開幕も延期、総理大臣杯も中止になった。
アピールする場がどんどん失われる中で、仲間たちは次々とJクラブに内定が決まっていく。だが、自分にはまだ一切声がかかっていない。
「昨年から主軸として出ていた選手はビッグクラブの加入が決まっていて、正直焦りがないと言われたら嘘になる。でも、今自分ができることは、きちんとコンディションを整えて、試合に出続けること。もしかすると本気でやるサッカーは今年で最後になる可能性があるので、1日1日を無駄にしないようにしていきたい」。
周りの関係者の尽力もあり、7月5日についに関東大学サッカーリーグ1部が開幕をした。駒澤大というロングボールとパワーに秀でたチームが相手とあって、明治大は【4-4-2】を選択。ダブルボランチのタスクはセカンドボールを回収することになったため、パスセンスのある彼はベンチスタートとなった。だが、1-0で迎えた58分に投入されると、システムも慣れ親しんだ【3-2-3-2】に切り替わり、住永がポゼッションの中枢として機能したことによって、相手に行きかけていた流れを取り戻すことに成功。1点のリードを守り切って、開幕戦勝利を飾った。
「本当にこうして開幕を迎えられたことに心から感謝したいと思います。今日の試合は途中出場でゲームコントロールをして、1-0のまま終わらせることが僕の役割だったので、そこはきちんとこなせた手応えはあります。多くボールを触ることを意識して、守勢にならずに攻撃を構築することを意識して出来ました。ただ、まだまだ満足はしていません。やっぱりどの試合であってもスタメンで出場したいので、来週の試合に向けて準備していきたい」。
試合後、彼はこう語ると、ようやく与えられたアピールの場に感謝をしつつ、これからの展望をはっきりと口にした。
「プロサッカー選手に対する思いは小さな頃から変わっていないし、今まで一緒にサッカーをやってきた選手がプロのピッチで活躍する姿を見て、自分も早くそこにいきたいと思っています。ただ、もしプロサッカーになることが厳しいのであれば、北海道に帰って実家の農家を継ぐつもりです。もちろん諦めたわけではなくて、明治大は他の大学に比べてもスカウトの見る目が違うのは感じているので、チャンスは一番ある場所だと思っています。だからこそ、ここで試合に出続けて、勝ち続けることが大事だし、そこが自分をアピールする最大のポイントだと思う。自分、チームをどうリンクさせるかを意識して、これから最後まで全力にやり抜きたいと思います」。
ラストチャンス。人生をかけて、青森山田を栄光の地へと導いた男が、自身の夢に向かって全力で走り出した。