大学サッカー通信
第44回 大学サッカー通信 ~小山内 慎一郎(青森山田高校→慶應義塾大学ソッカー部 3年)~
2020年11月01日
第44回 小山内 慎一郎(青森山田高校→慶應義塾大学ソッカー部 3年)
おさない しんいちろう
青森県出身。青森山田中学校から青森山田高校へ進学。中学3年時、全国中学校サッカー大会優勝。高校2年時は、高円宮杯U-18プレミアリーグと全国高校サッカー選手権優勝を経験。3年時はキャプテンを務めた。
青森ゴールVOL.11、14、29、30、44、45、46、47、49、50、青森山田2冠達成記念誌にインタビュー掲載。
取材・写真・文:安藤 隆人
取材日:2020年8月29日
関東大学サッカーリーグ第8節の明治大学vs慶應義塾大学
@RKUフットボールフィールド
関東大学サッカーリーグ第8節の明治大vs慶應義塾大の一戦で、青森山田高校のキャプテン対決が実現した。
2016年度キャプテンの明治大のMF住永翔と、2017年度キャプテンの慶應義塾大DF小山内慎一郎。ボランチ・住永、CB・小山内として高円宮杯プレミアリーグ優勝と全国高校サッカー選手権大会優勝を経験。キャプテンマークは住永から小山内へと引き継がれた。
一昨年、小山内が慶應義塾大に入学するが、前年に2部リーグ降格をしたことで、1部の明治大との対戦機会を失った。だが、昨年のリーグ戦で慶應義塾大は1部昇格を決めたことで、今年は同じ舞台となり、リーグ戦での直接対決が実現したのだった。
この一戦は小山内にとって特別な試合であった。新型コロナウィルス感染症拡大の影響で長い自粛期間を経て、サッカー部の活動が再開となった6月に左足第5中足骨を骨折し、手術を受けた。7月4日に1部リーグが開幕してからもリハビリに打ち込み、復帰したのは明治大戦の1週間前だった。
「明治大戦にはどうしても出たかった」と、必死にコンディションを上げた結果、この試合が彼にとっての今季リーグ戦初出場、怪我からの復帰戦となった。
「数ヶ月前に慎一郎のSNSで手術をしているという情報を見ていたし、試合前の対戦相手分析でも慎一郎が出るという風には言われていなかった。でも、今日の試合前に慎一郎がいて、凄く引き締まったいい表情をして『復帰しました』と言われた時は本当に嬉しかった」。
住永も予想外の小山内のスタメン。しかもピッチに立つと小山内はCBではなく、ボランチのポジションに立っていた。
「びっくりしました。やっぱり思い入れのある、高校時代に一緒に戦った仲間と同じピッチに立てるのは本当に嬉しいことだし、まさかのボランチ対決に燃えました」と住永が語ると、小山内も「守備を求められる中で、ボランチとして自分の出る意味を考えましたし、翔さんにも負けたくなかった」と意識を高くこの一戦に臨んだ。
前半は小山内が中盤の底で怪我のブランクを思わせない運動量と球際の強さを披露して、王者・明治大の攻撃の芽を摘み、0−0のスコアレスで戦い抜いた。
しかし、後半に入ると明治大が牙を剥き出した。その急先鋒にいたのが住永だった。48分、明治大は住永の右CKから東京ヴェルディ内定のFW佐藤凌我がヘッドで決めて先制すると、57分には住永が豪快ミドルを突き刺した。
目の前で偉大なる先輩の躍動するプレーを突きつけられ、結果は0−4の敗戦。だが、小山内は「点差が開いても最後まで走り抜く、体を張る、攻撃の芽を摘むという意識は絶対に失わないようにした」と、復帰戦を言い訳にせずに全力プレーを90分間やり切った。
「翔さんのプレーを見て、やっぱりトップクラスのチームのレギュラーとあって物凄くうまいし、凄く勉強になりました。感覚的にどこにボールが出れば危ない、チャンスになるとわかっている選手なので、僕も見習って成長していきたいです。やっぱり外から見ているだけでは分からない、本当に刺激的な時間でした」。
試合後、小山内の表情はさらに引き締まっていた。出遅れる形となってしまったが、これで彼の関東大学リーグ1部での挑戦がスタートをした。
「1部は僕にとって悲願の舞台。1部リーグにいるからこそ、スカウトの人たちの目につきやすいし、高いレベルで成長できる。もちろん、プロになることは厳しいこと。あんなに上手い翔さんもまだ決まっていない状態だからこそ、僕はもっともっと努力しないとなれない領域だと思います。今後のことも考えて一般企業への就職活動も視野に入れていますが、それであってもプロサッカー選手になる目標は絶対に捉え続けて、全力でやり切りたいと思います」。
たった1試合。だが、その1試合で人間は心身ともに大きく成長する。小山内慎一郎にとって住永との直接対決が、彼のサッカー人生において重要な1つのセクションになったことは間違いない。