大学サッカー通信
第51回 大学サッカー通信 〜田中優太朗(青森山田高校→札幌大学)〜
2022年03月09日
第51回 田中優太朗(青森山田高校→札幌大学)
たなかゆうたろう
青森県十和田出身。十和田JFCから青森山田高校へ進学。トップチームに食い込むことはできなかったが、根気良く努力を続け、札幌大学に進学。
取材・写真・文:安藤 隆人
取材日:2022年3月1日〜5日
第36回デンソーカップチャレンジサッカー
3月1日から5日までJヴィレッジで行われたデンソーチャレンジカップ福島大会プレーオフにおいて北海道選抜は快進撃を続けた。初戦で東北選抜に2-1で勝利すると、続く優勝候補の北信越選抜戦では5-0の圧勝し、決勝にまで選出した。決勝では東海選抜に0-2で敗れたが、インパクトの残る戦いを見せた。
その中でも目を引いたのが北海道選抜のGK田中優太朗だ。当初のメンバー発表では彼の名前はなかったが、GKで辞退者が出たため追加招集という形で選ばれた。すると初戦の東北選抜戦でスタメン出場を果たすと、東海選抜との決勝戦でもゴールマウスの前に立った。
青森山田高時代は全くと言っていいほどの無名の存在だった。青森県十和田市で生まれ育ち、高校から青森山田の門を叩いたが、トップチームには上がることができず。高3になっても青森県リーグ2部を戦う4番目のチームでプレーをしていた。
GKで言うと最後まで7番手という立ち位置だったが、「サッカーを高校で諦めたくなかったし、純粋にもっともっとサッカーをやりたい気持ちがあった」と、腐ることなく努力を続けていたことで将来が拓けた。
「正木昌宣コーチと札幌大の河端和哉監督が同級生で、札幌大がGKを探しているという話になって、僕が練習参加をさせてもらいました。そこで評価をしてもらえたことが僕にとって本当に大きな出来事でした」。
札幌大に入るとメキメキと頭角を現し、追加招集ではあるがデンソーチャレンジカップに出場できる権利を掴んだ。東北選抜戦では安定したゴールキーピングを披露。セービングのうまさと的確なコーチングで最終ラインを統率し、完封勝利に貢献。前述したとおり決勝でも敗れはしたが、スタメンフル出場を果たすなど周囲からの信頼を掴んで見せた。
「正直、僕自身が一番びっくりしています。大学サッカーでやれるとは思わなかったし、まさかデンソーのピッチに立てるなんて。でも高校時代からずっと諦めない気持ちを持ち続けた結果だと思います」。
まさに彼の言葉通り、折れそうな状況を何度も味わいながらも不屈の精神でサッカーに打ち込んだ成果であった。北海道選抜が戦った北信越選抜にはGK三文字瑠衣、DF二階堂正哉、神田悠成、FW田中翔太、東海選抜にはFW小松慧と青森山田時代のトップチームのメンバーがいた。
高校時代に手が届かなかった舞台に立っていた選手と肩を並べた。彼は自身のこの経験をこう言葉にした。
「高校時代は本当に悔しい思いがたくさんありましたが、それを経験できて良かったと今は思っています。デンチャレで戦った選手も青森山田で僕にとってはスーパーな選手たちばかりでしたが、僕の中でこれは『下克上』だとは思っていなくて、今大学サッカーで対等に戦っている。今、高校サッカーでBチームやCチームにいる選手にも、『腐らずにやり続ければ、大学に行って活躍できるんだよ』と言うのをおこがましい話ですが、プレーで表現できたら嬉しいと思っています」。
諦めないで自分を信じて努力し続けることで、見える景色は大きく変わってくる。
「高校で活躍をできなかった分、大学でもっともっと活躍します」。
7番手からの逆襲の物語はまだまだ始まったばかりだ。