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地域クラブ「イタチカ八戸」が協力 障がいの有無を越えて、子どもたちがサッカーで交流
2026年08月17日
8月16日、YSアリーナ八戸(八戸市)で、日本知的障がい者サッカー連盟が主催、東北知的障がい者サッカー連盟、青森県知的障がい者サッカー選抜チームが主管する、知的・発達障がい児者向けサッカー教室が開催された。
当日は知的・発達障がいのある6人が参加。協力した八戸市のフットサルクラブ「イタチカ八戸」の選手やその子どもたちも加わり、障がいの有無にかかわらず、参加者が一緒にボールを追いかけながらサッカーを楽しんだ。
☆ 事前に「知る」ことから始めた今回の取り組み
日本知的障がい者サッカー連盟の事務局長を務める葛尾優子さんに話を聞いた。
今回の教室で大切にしたことの一つが、イタチカ八戸の選手たちに、まず「知る」機会をつくることだった。
教室の開催前には、連盟が制作した知的障がいの特性などについて学ぶ動画を選手たちに視聴してもらい、基本的な知識を持った上で子どもたちと接する形をとった。
「クラブの皆さんに事前に動画を見てもらって、その上で子どもたちと一緒に活動するという形は、以前から理想として考えていました。でも、実際にはなかなか実現できなかったんです」
Jリーグクラブの中には知的障がい者サッカーのチームを持つなど、継続的に活動を支えているクラブもある。一方で、地域クラブが障がいについて事前に学び、選手たちが実際に参加者と一緒に活動する機会は、まだ決して多くないという。
その中で今回、イタチカ八戸が協力したことには大きな意味があった。
「イタチカ八戸さんがこうした形で取り組んでくれた最初のクラブになりました。今回の活動を終えて選手の皆さんの感想も聞きながら、良い事例になれば『こういう取り組みができました』と他の地域にも発信していきたいと思っています」
葛尾さんがこうした活動を広げたいと考える背景には、知的障がいのある子どもたちがスポーツに触れる機会が、まだ十分ではないという現状がある。
「スポーツを楽しむ権利は、この子たちにも同じようにあります。でも、一般のサッカースクールに通えるかというと、やっぱりハードルが高い部分があります」
だからこそ、地域で活動するクラブが障がいについて知り、実際に子どもたちと触れ合うことに意味がある。クラブ側にとっては障がいへの理解を深める機会となり、子どもたちにとっては普段とは違う人たちと出会い、一緒にスポーツを楽しむ新たな経験となる。
そして、イタチカ八戸との今回の取り組みは、早くも次へとつながり始めている。
「今回の活動が決まった後、別のクラブにも『8月にフットサルクラブが取り組んでくれるんです』とお話ししました。そうしたら『タイミングが合えば、ぜひうちも』と言っていただけました」
一つの地域クラブが踏み出した一歩が、次のクラブへとつながっていく。
葛尾さんは今回の教室を一つのモデルケースとして、知的障がい者サッカーと地域クラブがつながる機会を、各地域へ広げていきたいと考えている。
☆「こういう機会があれば参加しやすい」
今回の教室に参加した子どもたちの保護者にも、実際に参加して感じたことや、スポーツに触れる機会について話を聞いた。
普段、スポーツをする機会があまり多くないという子どもの保護者は、こうした教室がスポーツをするきっかけになっていると話す。
「こういう機会があれば参加しやすいです。サッカーやフットサル以外でも、本人が『やりたい』と言えば、やらせたいと思います」
「今日はサッカーが上手な子が多かったので、少し戸惑った部分もあったと思います。それでも頑張ってついていっていましたし、本人は楽しかったと思います」
それでも、コートの中で一生懸命にボールを追いかける子どもの姿を見ながら、「やっぱり、楽しんでいる姿を見るのはいいなと思います」と笑顔を見せた。
また、別の保護者からは、スポーツに参加することで得られる経験について話を聞くことができた。
「最初は親の方から『こういうのがあるけど行ってみる?』というところから始まります。でも、一度経験すると、次からは本人が『行きたい』と言うようになるんです」
また、サッカー以外にも陸上などのスポーツ活動に参加している。最初は保護者がつくったきっかけでも、一度体験して楽しさを知ることで、次第に本人の「またやりたい」という気持ちにつながっていくという。
そして、保護者が感じているスポーツの良さは、体を動かすことだけではない。
「いろいろな活動に参加することで、親や保護者ではない人と接する機会ができます。そこで人とのコミュニケーションの取り方を学べる。そういう経験は、子どもにとってすごく大きいと思います」
新しいスポーツに触れること、新しい人と出会うこと、そして自分から「やってみたい」と思えること。
保護者の言葉からは、こうしたスポーツの場が、子どもたちにとって楽しむだけではなく、さまざまな経験を重ね、成長していく大切な機会になっていることが伝わってきた。
☆「絶対に2回目をやりたい」
今回の教室に協力したイタチカ八戸の清水浩介代表に、イベントを終えて感じたことや、今後への思いを聞いた。
参加人数が想定より少なかったことには悔しさも残ったが、それ以上に、参加した子どもたちや保護者の反応に大きな手応えを感じたという。
「来てくれた子どもたちが喜んでくれたことが一番です。子どもたちはもちろんですが、親御さんからも『楽しそう』という声が聞こえてきました。そういう声を聞けただけでも、やって良かったと思いました」
イタチカ八戸は、これまでも障がいのある人たちとサッカーを通じた交流を続けてきた。清水代表にとって、今回の教室も突然始まったものではなく、これまでの活動の延長線上にある。
「今回だけゼロから始まったイベントではなく、これまで積み重ねてきた活動があって、今回につながったと思っています」
また、当日は北海道、岩手県、秋田県など県外からも知的障がい者サッカーに携わるスタッフが参加した。その知識や指導方法だけでなく、活動に向き合う姿勢や熱量も、清水代表やイタチカ八戸の選手たちにとって大きな刺激になったという。
「専門的なスタッフの方たちもたくさん来ていましたし、その熱量も刺激になりました。自分たちにとっては完全にプラスだったと思います」
参加した子どもたちだけではなく、指導や交流に加わった選手たちにとっても、新たな気づきや学びが生まれた今回の教室。その経験を一度きりで終わらせるつもりはない。
「絶対に2回目をやりたいです」今回はお盆期間中の開催ということもあり、参加者は少人数となった。だからこそ、次回は開催時期なども検討しながら、これまで地域で積み重ねてきた活動がどれだけ根付いているのかを確かめたいという。
「お盆ではない時期に開催した時に、どんな反応があるのかを見てみたいです。これまでやってきた活動が、地域にどれだけ根付いているのかを確認する意味でも、もう一度やりたいと思っています」
連盟、参加した子どもたちとその家族、そして地域クラブ。それぞれの想いがつながった今回のサッカー教室。
一度きりのイベントで終わらせず、障がいの有無にかかわらず、誰もが地域の中でスポーツを楽しめる環境へ。その輪をさらに広げていくため、日本知的障がい者サッカー連盟、イタチカ八戸は次の一歩を見据えている。