大学サッカー通信
第47回 大学サッカー通信 ~額川 賢哉(青森山田高校→大東文化大学 4年)~
2021年07月14日
第47回 額川 賢哉(青森山田高校→大東文化大学 4年)
ぬかがわ けんや
神奈川県出身。大豆戸FCから青森山田高校へ進学。3年時には全国高校サッカー選手権に出場。控えながら2試合に途中出場し1得点の活躍を見せた。
取材・写真・文:安藤 隆人
取材日:2021年7月10日
「アミノバイタル®︎」カップ2021 第10回関東大学サッカートーナメント大会
大東文化大学vs明治大学
「あれ、こんなプレースタイルだったかな?」。
アミノバイタルカップ初戦の大東文化大vs明治大の一戦で、大東文化大の10番を背負うMF額川賢哉のプレーを見て、筆者はそう思った。
青森山田高校時代は1トップで身体を張ってボールを収めて周りを生かすプレーヤーだった。中村駿太(カマタマーレ讃岐)の影に隠れた存在だったが、献身的なプレーとタフな運動量に目が行く選手だった。
卒業後、東京都1部リーグに所属する大東文化大に進学。最高学年となった今年、背番号10を託されて、総理大臣杯関東代表が懸かったアミノバイタルカップに出場をした。前述したように相手は関東1部の強豪・明治大。格上を相手に、10番を背負った額川は堂々たるプレーを見せた。
【5-2-3】の3トップの左で出場をした額川は、中盤に落ちて積極的にボールを引き出すと、鋭いターンとテンポの良いパス出しで試合のリズムを作った。印象的だったのがボールを持った時の落ち着きで、常に顔が上がっていて、相手の状況やタイミングを見ながら質の高いパスを繰り出す姿で、それはまさにゲームメーカーのプレーだった。
彼の作り出すリズムに乗って、29分にMF佐藤蒼太が先制点を蹴り込んでリードを奪った。そこから明治大の怒涛の猛攻にあい、後半に逆転を許してしまったが、その中でも額川のプレーのクオリティーは落ちなかった。チームがばたつく中で、彼がボールを持つと明治大も無闇に飛び込めず、ボールを奪うのに苦心していた。終盤には相手にわざと飛び込ませて股を抜くノールックパスを通すなど、最後まで相手にとって厄介な存在であり続けた。
結果は1−2で敗れ、彼の大学最後のアミノバイタルカップは幕を閉じたが、試合後の彼の表情は晴れやかだった。
「この4年間で一番強い相手とできたことは大きいし、楽しかったです」。
高校時代とプレースタイルが違うことに言及すると、彼はこう続けた。
「高校時代から見てくれている人からすると驚くとは思います(笑)。高校は1トップで収める形が多かったのですが、大学に入ってトップ下やシャドーをする機会が増えて、自分が作るイメージをするようになりました。相手を見て逆をついたり、タイミングを外すプレーを意識するようになりました」。
プレースタイルを変えた中でも変わらないものがある。それは高校時代に培ったものであった。
「僕は中学時代に街クラブでプレーしていて、そこから全国トップレベルの青森山田に来たことで、全国レベルを経験させてもらった。前への推進力は間違いなく高校時代に身についたもので、ハイレベルな選手たちの中でもまれた経験が自信となって、大学サッカーでもプレーを続けられることができたと思います。新たな自分を大学で発見できたし、自分の選手としてだけでなく、人間としての幅も広がったと思います」。
すでに車の販売系の会社の内定をもらっており、本気でするサッカーは大学で最後となる可能性もある。だからこそ、後悔のないようにやり切りたいという想いは強い。
「もちろんプロになりたい気持ちはあります。でも、それが叶わなくても、僕は自分の道をきちんと進みたい。まず今年の1年は結果に拘ってプレーをしたいし、その先は高校と大学で学んだ自立性というか、自分で考えて、意見を目上の方にもきちんと伝えて、かつ話を聞いて成長できるような社会人になりたいと思います」。
謙虚に、かつ実直に。プレースタイルを変えながらも、変わらない人間性を持って、額川は未来を見据えて今をしっかりと歩いている。