大学サッカー通信
第41回 大学サッカー通信 ~小山 新(青森山田高校→関西大学4年)~
2020年08月29日
第41回 小山 新(青森山田高校→関西大学4年)
こやま あらた
青森県六ケ所村出身。六ヶ所FCから青森山田中学校、高校と進み、関西大学に進学した。高校3年時にはレギュラーで活躍し、高円宮杯U-18サッカーリーグ2016チャンピオンシップで優勝。この年の高校選手権でも優勝し、高校年代2冠を達成した。今季から関西大学のキャプテンを務める。
取材・写真・文:安藤 隆人
取材日:2020年8月10日(月)
@Jグリーン堺
掲載号VOL.40.44
8月3日の九州開催を皮切りに、スタートをしたコネクティング・サポート・セレクションin九州・中国・関西・東海 supported by ポカリスエット(株式会社リトルコンシェル主催)。8月10日から大阪のJグリーン堺で行われた関西開催において、2人の青森山田高の2冠メンバーが将来を懸けて大一番に臨んだ。
「自粛明けでなかなかコンディションが難しい中でも2ヶ月経って上げてきた時にこういう機会に参加できてよかったと思っています」
関西大学のCB小山新は、34ものJクラブのスカウトが熱視線を送る中、20分×4本のミックスゲームで3バックの右CB、4バックの右C Bでプレー。1本目は硬さが目立ったが、2本目以降は尻上がりにプレーの精度が高まってくると、得意の空中戦の強さ、ハードマークとフィードを披露した。
プロ志望だが今、彼のもとにオファーはなかった。最高学年となった今年はチームのキャプテンにも就任し、春から始まる関西大学リーグ、総理大臣杯に向けてモチベーションを高めていた。だが、新型コロナウィルス感染拡大の影響でリーグ戦の前期と総理大臣杯が中止。アピールする場がなくなった。
「ずっとミーティングを重ねてきて練習もして、『さあ、これから』という時に活動できなくなって難しくなった。でも関大サッカー部としてズームを使いながら、ミーティングを重ねて、『今自分たちにできることは何だろう』とキャプテンとして考えていたら、自分自身を見直す機会にもつながりました」
自粛期間は小山にとって大きな転機になった。もともと彼はしっかりと物事を考えられる選手だった。昨年12月には「4年生でサッカーに集中できる環境を作るために」と就職活動をスタート。2月には関西の保険代理店に内定をもらった。
「企業の方にも『僕はプロサッカー選手を目指しています』とずっと伝えた上で面接などを受けていましたし、それを汲んでくれた上で内定をいただくことができました。『夢を追いかけることが第一だから、いつまでもプロの話がきたらうちの内定は断ってくれてもいいから』というお言葉もいただいて、物凄く感謝をしています」
4年になってずっと万全のコンディションでサッカーができるとは限らない。不利な状況や厳しい状況になったときに焦ったり、自分を見失わないために就活をして、結果を掴んだ。だからこそ、コロナ禍という不測の事態でも冷静に自分を見つめ直すことができた。
「何で今キャプテンをやっているのか、何で今サッカーをやっているのかなど、自分の人生における軸とは何かを考えました。その中で1つ見つかったのが、自分の人生の中で『夢中と成長』をずっと大事にしているということ。もちろんサッカーにおいて努力することも大切なのですが、努力するよりも夢中になれている時の方が僕自身成長できていると思ったんです。じゃあ、今自分が夢中になれるものってなんだろうと思った時に、やっぱりサッカーだなと思いました。正直、サッカーをもうやめようかなと諦めかけたこともあったのですが、コロナ自粛期間でやっぱり自分が夢中になれるのはサッカーだなと改めて気づけたので、ここでもう1回本気でプロを目指してやり切ろうと思ったんです。仮にプロになれなくても、この経験が自分の人生につながると思ったので。そういう意味ではプラスな時間になったと思います」
人生において大切にしてきたものをこれからも持ち続けられるように。小山は精神的にも肉体的にも準備を積んで、このトライアウトの場に立った。
「こういうチャンスをもらえたことは本当に感謝しています。だからこそ大切にプレーしないといけない。普段一緒にプレーしない選手と将来を懸けて戦うことで、僕としても大きな経験になりますし、そういう機会だと思って大事にしてきました」
こうはっきりと言った小山の表情は覚悟に満ちていた。今回のトライアウトで彼の下に念願のオファーが届くかどうかは分からないが、迷うことなく前を向く姿勢は力強さを感じた。
「青森山田で同級生だった(廣末)陸(町田ゼルビア)や(高橋)壱晟(ジェフユナイテッド千葉)がプロに行って、(三國ケネディ)エブス(順天堂大)も水戸ホーリーホックに決まって、僕も一緒にプロの舞台で戦いし、負けたくない。次の時間帯のトライアウトに参加する(嵯峨)理久も頑張って欲しい。僕らは『青森山田2冠』の看板を背負っているので、黒田剛監督などに結果で恩返しをしたい。絶対に諦めません」